文学

コンビニ人間に接続した機械が書いた文章

妻に薦められて読み始めた村田沙耶香さんの『コンビニ人間』。 冒頭の描写で引き込まれた。 そして、自分の思考が回り始めて読書が止まった。コンビニ人間 (文春文庫)作者:村田 沙耶香文藝春秋Amazon 機械になる快楽 私が好きなアンディ・ウォーホルの言葉に…

マックス・ヴェーバーと夏目漱石

マックス・ヴェーバーは1864年生まれで、夏目漱石は1867年生まれです。 つまり、3歳ほどしか違わず、ほぼ同世代と言っていいでしょう。 大澤真幸さんの『社会学史』を読んでいて、ヴェーバーと夏目漱石を比較するとおもしろいのではないかと思ったところで…

ナイチンゲール伝〜グレタトゥーンベリもしくはイーロンマスク

鹿児島国際大学の入学式式辞で小林潤司学長が取り上げたストレイチーの「ナイチンゲール伝」、「悪魔に取り憑かれた」と表現されたナイチンゲール、早速、岩波文庫の『ナイティンゲール伝他一篇』を読んだ。 ナイティンゲールより、ナイチンゲールが好みなの…

仕事や家庭を壊さない程度の狂気の再発明

「仕事や家庭を壊さない程度の狂気」を早急に準備しないといけない。 その狂気にいくつかのスタイルを考えてみた。 ワーニャ伯父さんと同じ47歳の方法として。 彼のように拳銃をぶっ放すというのは、現代日本では仕事も家庭も壊してしまう。 要注意。 近所…

反射する光~Kindle Paperwhite

松浦寿輝さんの『青天有月 エセー』で「反射する光」という言葉があった。 たぶん。 松浦さんの文章は、すっと意味を理解するのは難しいので、その方向性とは違うかもしれないが、私が思い出したのはKindle Paperwhiteだ。 Kindle Paperwhiteは、寝る前に見…

浜田到企画展を見てきたよ~詩人の心得に刺激を受ける

かごしま近代文学館の企画展「孤高の詩人(うたびと)浜田到」を見てきた。 知っている人も少ない歌人であり詩人である浜田到(詩を発表した時は浜田遺太郎)は、鹿児島の医師であり、東京に出ていくことは無かった。 中井英夫に評価されていたっぽい。 企画…

感情→思考→NextAction

ノートの左ページに「感情の言葉」、右ページに「思考の言葉」を書く、というノート術を見た。 なるほど、感情の客観視になる。 感情を思考に置換する。 樺沢紫苑さんは「感情はただの脳内物質変化」ということを書かれていた。 自分を客観視することは、夏…

鍋焼きうどん問題は間違いかな?〜幸田露伴『五重塔』⑤

幸田露伴『五重塔』について5回目。 鍋焼きうどん問題は、私が間違っていたかもしれない。 其十三 長い源太の提案の後、十兵衛は一言でその提案を拒否してしまう。 其十四 夫の十兵衛に呆れて、言葉が走るお浪。 良くもこんなに言葉が出てくる。 最後に黙っ…

明治の表象空間を読み始めて

図書館で松浦寿輝『明治の表象空間』を借りてきた。 幸田露伴について書かれているので読みたくなったのだ。 それにしても分厚い。 幸田露伴は555頁からだ、その554頁までは何が書いてあるのだろう。 確か松浦さんは東京大学の教授だったかと思うが、よくこ…

幸田露伴「五重塔」の時代設定について鍋焼きうどん問題が沼〜五重塔④

幸田露伴『五重塔』を読む4回目。 前回は、其十三の鍋焼きうどんで止まってしまった。 まだ、章の途中だが、鍋焼きうどんの呼び声が意外と大きな問題のような気がしてきた。 インターネットで検索すると、色んな人が鍋焼きうどんは、まず江戸末期に大阪で流…

鍋焼きうどんと時代設定~五重塔③

幸田露伴『五重塔』を読む3回目。 出張があったりしてなかなか進まない。 其十 十兵衛の「やむにやまれぬ心」(八重の桜)が描かれる。 私は、綾瀬はるかさんが美しかった大河ドラマ『八重の桜』の確か2回目、やむにやまれぬ心というキーワードが心に残り…

五重塔②〜決断力のないトップとしての朗円上人

少しずつ幸田露伴「五重塔」を読む。 2回目。 其五 ぼろい半纏を来ている男。 自分は昔、半纏のことを丹前と呼んでいた。 調べると丹前はもっと丈が長くて、膝下くらいまであるものだとわかった。 時を戻そう。 「補綴のあたりし古股引」は、其三でのっそり…

幸田露伴『五重塔』を丁寧に脱線しつつ読む①

幸田露伴『五重塔』を読み始めた。 青空文庫があり、Kindle版も0円で読むことができる。 しかし!この日本語は、もはや普通には読めない。 今回は、そこを読み飛ばさずに、一語一語、おさえながら読んでみるとどうなるか、というスローリーディングの試みを…

ロラン・バルトとホットドッグ

平日の休みを利用して、一人で街へ出かけた。 昭和レトロの小さな町をぶらり歩いてみた。 そして、ひさしぶりに古本屋に入った。 学生の頃は、古本屋かCDショップに毎日のように通っていた。 しかし、それも15年以上も前の話だ。 ランダムに、しかし、なんと…

サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』~ガーデンズ文学カフェ

サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』を読んだよ。 たぶん3回目かな。 最初はたぶん十代後半の頃、野崎孝訳の『ライ麦畑でつかまえて』かな。 次は、村上春樹訳の『キャッチャー・イン・ザ・ライ』が出た2003年頃。 そして、今回。 今回は、ガーデ…

ストリンドベリの言葉

苦しみつつ、なおはたらけ、安住を求めるな、この世は巡礼である という言葉が好きだ。 ストリンドベリという人がどういう人か知らない。 それでも、この言葉には強い力がある。 覚悟しろ、といった強さ。 人に対して優しい言葉は聞き飽きた。 聞き飽きて、…

文部科学省と財務省の官僚に読ませたい森鴎外『渋江抽斎』の一節

photo by Patrick He森鴎外『渋江抽斎』の中に次のような箇所があった。これは作者の考えの表明された箇所だと思われる。 学問はこれを身に体し、これを事に措いて、始て用をなすものである。否るものは死学問である。これは世間普通の見解である。しかし学…

『キッチン』のフラット、そして自分にとって書くこと

photo by jhiner 吉本ばななさんの『キッチン』を久しぶりに読み返していいなと思いました。主人公の桜井みかげが田辺雄一の善意を信じたのは、彼の申し出がフラットなものだったからだろう。 悪く言えば、魔がさしたというのでしょう。しかし、彼の態度はと…

佐藤優『国家と神とマルクス』を再読したよ〜もっと勉強しようと思う本

photo by Dunechaser年が改まったので、佐藤優さんの本を再読してみました。(↓過去記事) 佐藤優『国家と神とマルクス』を読んで、自分の「神」は何だろう? - シリアルポップな日々:serialpop days 佐藤優『国家と神とマルクス』を読んで、自分の「神」は…

本当に頭がいいとは、フラットなユーモアを持って悲惨ささえ笑いのためにしてしまう力ではないか〜司馬遼太郎『世に棲む日日』

photo by shin--k司馬遼太郎さんの『世に棲む日日(一)』を読んで、一番残ったのは、吉田松陰の母である杉滝の性格です。 「苛烈ささえ、彼女にとっては陽気な詩のたねになった」とか、「聡明ということのみが本来陽気のためになりうるものであるということ…

『古事記』の率直な表現がおもしろい

梅原猛さんの『古事記 増補新版』を読みました。現代語訳? 『古事記』を通して読むのは初めて。痛快なほど率直に書かれています。すぐ交わります。殺します。それを梅原猛さんは非人間性とか異常なことと書きますが、それは近代の人間観での価値判断だと思…

石原慎太郎「太陽の季節」を読んでみた

今まで四十歳近くになるまで石原慎太郎さんの「太陽の季節」を読んだことが無かった。それで石原慎太郎さんを馬鹿にしていた。 今回、サブカルチャーのテレビ番組で取り上げられたことをきっかけに読み始めた。幻冬舎から2002年に新しく単行本として出ていた…

吉田健一にしか興味はない〜叙情と闘争

9月13日の読売新聞「叙情と闘争」には吉田健一の名前があった。 だから読んだ。 他の連中に興味はない。 で、吉田健一に政治家になるようにすすめた人はア○だと思った。 あ、すすめた人の関係者がいたらゴメンナサイ。 吉田健一みたいなんを政治家されて…

子どもへの愛情〜プレーンソング

プレーンソング (中公文庫)作者: 保坂和志出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2000/05メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 79回この商品を含むブログ (183件) を見る 「よかった。いつも缶、二つ持ってるの」 「準備のいいやつだな」 「準備じゃなくて愛情…

工場やコンクリートの柱が好きだ〜反自然の美学

特急リレーつばめから車窓を見やると、朝日に照らされた巨大なコンクリートの柱が並行して連なっています。建設中の九州新幹線の線路を乗せる柱群です。これが非常に美しい。 坂口安吾ではありませんが、こういった反自然な人工物が私は大好きです。▼ 煙突か…

スタバで執筆

スターバックスに来ました。 トールサイズ ラテ ツナメルトサンドイッチ 美味だけれど420円は高いなあ ちょっとお腹をみたして、執筆。ザウルスSL-C1000のZEditorでブログ原稿など書いています。 もちろんトラベラーズノートもテーブルに置いて、無印良品…

慈眼寺ガーデンマーケット

こうやって鹿児島に住んでいることを明かしてしまえば、慈眼寺ガーデンマーケットのこととか具体的に書くことができてわくわくする。 今年が2回目ということですが、非常にいい雰囲気でした。主催者側の要望では公共交通機関をご利用くださいということでし…

私の物書きとしての弱点

描写力がない それは日常、私がろくにものを見ていないことからきている。上の空でぼんやり生きている。 昔の日記を読み返してうんざりするのは、自分の気持ちばかり書いているときだ。恋愛中とかそう。描写が欠けている。自己にしか興味がない。それで結局…

プロの物書きになるために

1日4時間くらい、書くことのほかに何もしない。 ルールは2つ、 むりに書く必要はない ほかのことをしてはいけない 村上春樹訳のレイモンド・チャンドラー「ロング・グッドバイ」の訳者あとがきに元となったチャンドラーの手紙が紹介されている。 テニスで…

心に刻む言葉

「魔球だの何だのありえない技にあこがれないこと。ありえない技に逃げるその精神の弱さが問題だ」(「エースをねらえ!)