ジョン・マリンズ+ランディ・コミサー『プランB』山形浩生訳を読んだよ〜国立大学法人のプランBについて考えてみる

『プランB』を読了しました。安心の山形浩生ブランド。山形さんが翻訳した本は、難しくて理解できないことがあっても、読んで間違いはありませんね。本書も自分の仕事にも機能しそうです。

自分が読みながら考えたのは、研究のこと。研究って、小保方晴子さんがやっていたこと。あと、科研費と言われる科学研究費補助金とか。たとえば、ノバルティスファーマで問題になっている臨床研究なんかも研究。大学や研究所、企業で行われていること。時々、そこからノーベル賞が生まれたりする。山中伸弥さんみたいな成果も生まれる。これらの研究も『プランB』で取り上げられているビジネスと同様に、ほとんどが当初のプランAではなくてそこから派生したプランBで成果を上げているような気がします。
さて、ここで問題なのが、先に挙げた科研費のような国の税金から出されている研究資金のこと。その多くが最初に研究者に研究計画書を作らせます。そして、その計画書を元に審査して交付を決定。お金を渡して研究する。その成果を報告書として提出させる。それが一つのサイクルになっています。問題は、このサイクルが実に官僚的ということ。当たり前ですよね。税金だもの。官僚が作った制度だもの。官僚的なのは当たり前。計画書、つまりプランA通りに研究をして、研究費もプランA通りに使って、万一、計画書と違う使い方をしたい時は金額の大きさなどによっては事前に計画書を変更して了解を得ることが必要。そして、報告書はプランAを実行したということを書かせる。プランAを進めていたらプランBに移行したという報告書はおそらくはねられます(もしそんなことないよ、という人がいたら教えてください)。
それは、国の予算と決算に通じるところがあります。霞ヶ関の官僚というのは、一般的に決算には興味がありません。重視してエネルギーを費やすのは予算、お金を獲得することに偏重しています。とにかく資料を作って予算を獲得することが第一目標になっています。つまり、ビジネスプランを作ることが目的。そして、予算執行はとにかく予算の枠組みをはみ出さないようにする。だから、予算の執行過程でどんなによいプランBが見えたとして、そちらに移行することはできない。そういう不合理なところが官僚組織にはあるわけです。優秀な頭脳リソースが予算獲得にほとんど使われてしまっている。もったいない。そして、科研費のような研究費も、研究においてプランBに移行することは日常茶飯事なのにそれを基本的には認めない仕組み。もちろん研究においては、国、税金というのが大きな資金源ですから、国や国民としった「投資家」に説明していく責任はあるでしょうが、目の前に有望なプランBが見えるのにそちらに移行しにくい制度はどうにかならないものかと思います。以上が『プランB』を読んで一気に考えたこと。事実誤認もあるかと思いますが、それらはこれから少しずつ是正していこうと思います。

また、時間を置いて読み返すとよさそうです。
以下、レバレッジメモ。


真の男とガキの違いプランAが失敗した時傷をなめて立ち直る「マッチョ」
モノマネじゃうまくいかない
ダッシュボード
大学や研究所における研究だってプランBが成果になることが多いのではないか?
iPodWALKMANウォークマンナップスター組み合わせ
方法論は、公益を図るNPO事業にも有益大学経営に「ビジネスプラン」の考え方を導入する
寄附金と授業料を組み合わせる財務モデルの可能性ALA=アフリカン・リーダーシップ・アカデミー
間違っても構わないそれで増えた知識をもとにプランBへ移行する
Googleは、組織全体でイノベーションを受け入れることで突破口を開いてきた変化に寛容な組織変化を善とする組織20パーセントルールGoogleはプロジェクトの「失敗」も多い
シルバーグライド・サージカル・テクノロジーズ
本当に新しいものはほとんどない車輪を再発明する必要はない
イーベイ売上原価がほぼゼロ
トヨタのプランB=レクサス
パタゴニアイヴォン・シュイナード環境保護片足は必ずブレーキの上に成長し過ぎも危険持続可能な成長勝ち続けることパタゴニアは、しかし、私が長く疑っている企業シー・シェパードへの資金提供2014年現在は、どんな関係?どうしても「白人至上主義の人種差別者の正義が鼻につく」というイメージが私にはあるのです
利益は、会計士が作り上げたフィクション大事なのはキャッシュ(現金)ちなみに国立大学法人会計基準においても、利益はほとんど意味がありません国立大学法人には現金はたくさんある、そこを追求されたり、財務省の予算削減に利用されたりするのですが、現金の見返りは寄附金債務などの負債であることがほとんどなので自由に使えるわけではありません。とはいえ、寄附金は寄附金だろうというのが世の中の常識。よって説明責任が求められる。
運転資本モデルマイナスの運転資金
大企業内の新規事業でも成り立つ
Amazonイノベーションより試行錯誤トライ・アンド・エラー無数の小さな歩みを押し進めること+踏み外したときには素早く学ぶこと
組織内の個人の試みはそれ自体「善」という文化にしなければならない
「計算してみても、何が起こるかはっきりしない」ジェフ・ベゾス
ジェフ・ウィルケ「アマゾンの運営の神様」私のキャラクターのせいだと思いますが、ベゾスよりウィルケの方が気になります
セルテル・インターナショナルイブラヒーム世界のアフリカに対するイメージ=認知と現実のギャップを利用した
「計画は役立たずだが、計画は不可欠だ」アイゼンハワードラッカーが「ナポレオンはアクションプランどおりに事が運んで戦いに勝ったことはないと言っていた。しかし、彼はあらゆる戦いで歴史上例のない厳密さでアクションプランをつくっていた」ということを言っていた気がします。プランAを徹底的に作ることが必要プランAを作るプロセスでしっかり自分で考えたことがプランBに活きてくるということでしょう。だから、プランAをコンサルタントに作らせたりしてはダメなんでしょうね。
最終的にうまくいくのはプランB
ビジネスプランの三つの要素

  1. 情熱だけ、証拠がない、「〜だと確信する」
  2. あらゆることが事前にわかっていると想定
    1. そんなことはあり得ない
  3. 将来の大きな不確実性
    1. 「敵と出会ったとたん役立たずにならない計画などない」ダグラス・マッカーサー

あくまでプランAに専念すべき
プランBはじきに姿を現す

プランB 破壊的イノベーションの戦略

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