国立大学協会総会についての毎日新聞ツイートを読んでみた~国立大学法人運営費交付金について

togetterにまとめられた毎日新聞科学環境部「幻の科学技術立国」取材班のツイートを元に自分なりに整理してみる。
個人的な見解も含まれることに注意ください。
個人的な見解には★印を付けて区別しようと思ったのですが、切り分けがめんどくさいので止めました。
togetter.com
2019年1月23日、国立大学協会総会が開催されたようです。
定款によると、

 一般社団法人国立大学協会は、各国立大学法人が実施する教育・研究及び社会貢献に関する多種・多様な活動において、質の高い成果を挙げるための環境作りを行い、もって国立大学法人の振興と我が国の高等教育・学術研究の水準の向上及び均衡ある発展に寄与することを目的として設立されました。
 会員は、正会員の全国86の国立大学と、特別会員の4機構です。

という組織です。
略して「国大協」となります。
国立大学法人のロビー組織と言えばそうなんでしょうが、政治的な力は大きくないと思われます。
政治的力が大きかったら、財務省の一官僚が京都大学の学長でもある国大協会長を相手に「バンと机をたたき、声を張り上げた」りしないでしょう。
この財務省主計局次長の神田眞人氏は以前から積極的に個人名で発言されていて、それはそれで立派だと思いますが、机を叩いて声を張り上げるなど、丸で『半沢直樹』の悪役キャラのように見えます(あくまで個人的見解です)。
山極会長は直接、財務省に乗り込んで、その際に対応したのが前述の神田氏で、半沢直樹的な場面となったようですね。
この財務省に乗り込んでの交渉もうまくいかなかったため、総会の冒頭では山極寿一会長がお詫びされたようです。

結果、2019年度に国立大学法人運営費交付金の予算全体約1兆円のうち、1割程度の1,000億円が評価再配分対象となったようです。
正確には、2016年度からのKPIによる評価分300億円+共通指標による評価再配分700億円という内訳になるようです。
この運営費交付金の配分の概況については下記ブログ記事が整理されていてわかりやすいと思います。
kakichirashi.hatenadiary.jp
財務省は1,000億円と言い、文部科学省は700億円と言うのですが、どのみちその枠が拡大される方向性は既定路線のようです。
2022年度からの第4期中期目標・中期計画期間で「運営費交付金の全体的な見直し」が盛り込まれました。
安倍首相の発言にもあります。
2018年12月20の総合科学技術・イノベーション会議での発言です。

この改革を更に推し進め、戦略的・計画的な経営改革が行われるよう、第4期中期目標期間において、運営費交付金全体の配分方法の見直しを実現します。

内閣府財務省は運営費交付金全体を評価による再配分対象としたいようです。
いわば運営費交付金全体が競争的資金のような性格になってしまうということで、国立大学法人の基盤が不安定になることを意味します。
影響は、地方大学や単科大学により大きくなることが想定されます。

これは個人的な想像ですが、東京大学OBを中心とした財務省官僚の本音は、地方国立大学不要論じゃないかと思われます。
国立大学は旧帝国大学ぐらいに絞って、運営費交付金を半分の5,000億円に削減して旧帝国大学のみでやりたいのが本音のような気がしています。
もちろんそんなことを明言するとさすがに地方の反発が大きいでしょうから、その本音は内に秘めたうえで、適当な理屈をつけて地方国立大学の体力を削り取っているような現状だと思います。
やり方がえげつないですよね(個人的な見解です)。
堂々と自らの主張を掲げてもらいたいところです。

さて総会に戻ると、山梨大学の島田学長が、自民党塩崎恭久行政改革推進本部長の読売新聞での意見表明を「アグレッシブ」と表現されていました。
なかなかうまい優しい言い方だなあと感心しました。
そのニュアンスは、下記を読んでいただけるとわかると思います。
kyoiku.yomiuri.co.jp
塩崎さんにレクチャーしたのは誰かな?って思います。
その辺りの内実も気になります。
行革推進本部長におかれては、以前、河野太郎さんの時は、大学教員にとってプラスになる方向へ働いていただいたと記憶しています。
果たして塩崎さんはどうでしょうか?

それにしてもみなさんGAFA大好きで、よく事例に出されるけれど、少なくともAppleスティーブ・ジョブズは大学教育の成果として生み出されたもんじゃないですよね?
その辺、大丈夫なんでしょうか。
不安です。
すぐGAFAを事例に挙げるような人の話は、ちょっと?をつけた方がいいかもしれません。

山極会長が、財務省は国立大学を分断しようとしている、と発言されていますが、これって先の私の想像を裏付ける気がします。
要するに、旧帝国大学と地方国立大学や単科大学を分断して後者を潰そうとしている。

島田学長と山極会長が泥仕合とありましたが、どういうことなんでしょうね。
こういうプロレス的なやり合いって、おもしろおかしくマスコミに取り上げられるかもしれません。
しかし、国民一般に対して問題を知ってもらうという意味では効果的かもしれません。
神田主計局次長の半沢直樹的な机バーンだって、見方によってはおもしろい。

ところで、島田学長は先日、年頭挨拶の一部が切り取られてネットでネトウヨ発言だ!と叩かれていましたが、そちらはおさめたのでしょうか?
島田学長の発言については、高橋洋一さんが「異様な反日政策」より「運営費交付金」を報じるべき、と的確に書かれています↓
www.j-cast.com
誰かの発言については、一部を切り取るのではなく、全体を読むべきですね。
たとえばTwitterは情報の入口としては便利ですが、ツイートそのものを根拠にするのは危険です。
必ず自分で深掘りしたり、一次資料に当たる必要があります。
数多くのフォロワーを持っている名のある人ですら、そのちょっとした手間を惜しんでデマをばらまくことが多いので注意しなければなりません。

国大協にシンクタンクを置くべきだ、とは広島大学の越智学長の発言。
確かに財務省の恣意的な資料作成及び政治的な根回しに対抗していくにはシンクタンクが必要かもしれません。
最近の流行にEBPM(根拠に基づく政策立案)というのがあります。
EはエビデンスのEですね。
財務省エビデンスは信用できないと個人的に思いますが、それにはやはりエビデンスで対抗しないといけないわけです。
その点、豊田長康先生の本は財務省に対抗するのに有効な武器となり得るような気がします。

科学立国の危機: 失速する日本の研究力

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教育の指標は難しいというのは世界の常識のようです。
今回、700億円の共通指標にも教育に関する指標は含まれていません。
試行と言いながら、とりあえず2019年度予算はそれで再配分されるわけですから、、、なんとも厳しい。

法人評価を運営費交付金配分に反映させることについては国大協も異論は無いようですね。
秋のレビューでも、法人評価と運営費交付金配分が結びついていないことが確か指摘されていた気がします。
今は要するに法人評価と概算要求が別々に動いているような状況なので、そこは連携させた方が国民にもわかりやすいし、大学の評価対応負担も減ると思われます。

財務省とどう戦っていくかについては、たとえば地方国立大学であれば、地元選出の国会議員に対するロビー活動などは必要になってくるでしょうね。
政治家の力を借りないと財務省には対抗できない。

ざっと勢いで書いてみました。
勢いでは書いているのですが、普段から運営費交付金については色々と考えているので、それがうまく表現されていれば幸いです。
うまく伝わらなければ、まだ思考が足りないってことで、精進します。
かつ、日和ってかなりマイルドな書きぶりにしました。

最後に、実況ツイートをしてくれた毎日新聞科学技術班、それをtogetterにまとめてくださった中村亮一さんには感謝です。

去年の秋のレビュー(行政事業レビュー)や山極寿一会長VS神田眞人財務省主計局次長の半沢直樹バトルなど、色んな背景を押さえたうえで読むと色々と見えてきますね。
下記のモーメントも背景を理解する参考になります。
twitter.com

ここまで書いて何かリアクションがあれば、それに対して追記したり、修正したりしようと思います。
そうすることで自分の思考もソリッドな武器になることを期待しています。