イノベーションに「選択と集中」することはできない

Googleの成功には運が重要な役割を果たしている、というのが『ファスト&スロー』の言葉だった。
だから、学ぶことは少ない。
つまり、孫正義さんやホリエモンからも学ぶことはできない。
成功に再現性は無いからである。
同様にイノベーションにも再現性は無いから、学ぶことができない。
よって、あらかじめイノベーションをももたらすシーズを予想して、予算を「選択と集中」で投入するのも無駄に終わる可能性が高いだろう。
後知恵バイアスで、成功した人をいくら分析しても次のジョブズは見いだせない。
偉い官僚にはそれがわからんのですよ。

私が最悪だと思うのは、財務省の官僚は本当はイノベーションを予想することはできないと理解しているんじゃないかということ。
その上で、予算を削減するために「選択と集中」という論理を利用しているだけじゃないかと。
また、政府全体が、イノベーションの大合唱なのも筋が悪い。
有識者を集めても、あらかじめイノベーションを起こす事業を選択することはできない。
多くの税金が無駄になる。
それでいいのか?
無駄が生じれば、財務省はここぞとばかりに予算削減圧力をかけてきそうだ。

『ファスト&スロー』を読むと、成功者が楽観的になるメカニズムもわかる。
そうやって自分の人生を肯定しているんだろう。
冷静に考えると根拠がなくて不安定な自分の成功を支えたいのだろう。

ここまで書いて、放置して、青臭いなあと思うが、そのまま投稿しておこうと思う。
こういう財務省批判みたいな内容って難しいね。

続いて『ブラック・スワン』を読み始めたんだけれど、読み始めてすぐに、能力に対する報酬だのインセンティブだのを与えてもうまくいかないので、とるべき作戦はありとあらゆることをやってみて、ブラック・スワン「黒い白鳥」を捕まえるチャンスをできる限り集めるというやり方だと書かれていて笑える。
財務省を筆頭とする「選択と集中」派は『ブラック・スワン』を読んでいないか、読んでも無視しているか、ブラック・スワン的な論理には与しないということだろうが、それで今まで失敗してきたのではないか。
国立大学に対しては、基盤的経費としての運営費交付金には手を付けずに、そのまま配分し、86大学がそれぞれあらゆることをやってみるのを支えるのがイノベーションというブラック・スワンを捕まえるのにはベターな予算配分なのではないだろうか。

ファスト&スロー (上)

ファスト&スロー (上)