高橋*1秀実『「弱くても勝てます」開成高校野球部のセオリー』をゲラゲラ笑いながら読んだよ

本を呼んでゲラゲラ笑ったのは、穂村弘さん以来のような気がします。開成高校の野球部部員の受け答えがいちいちおかしかった。著者さんの書き方もたぶんうまい。ウォーターボーイズ的な滑稽な映像が目に浮かびます。
みんないたって真面目、そして頭もいい。
プラス、仕事術としても読むことができる本でした。
開成高校野球部の生徒たちに負けないように。仕事降ってくるな!

以下、レバレッジメモ。

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photo credit: alexxis via photopin cc

レバレッジメモ

苦手と下手は違う。苦手は自分でそう思っていること、下手は客観的に見てそうだということ。なるほど。
開成は頭脳でエラーする。スポーツであまりに頭を使うと動きが遅れるということはありそう。

一般的な野球のセオリーは、拮抗する高いレベルのチーム同士が対戦する際に通用するもの。と開成高校野球部監督。これにはなるほどと思います。同じことをしていたら開成は絶対に勝てない。そこで頭を使って独自のセオリーで戦う。
これは、私が最近よくこだわっているアート=技術の問題ですよね。開成高校野球部にはアートがあります。

ギャンブルを仕掛ければ活路が見いだせる。勝つ確率を1%から10%に引き上げる。
映画『のぼうの城』が同じような構造のような気がします。見ていないので、あくまで想像ですが。
弱者の戦い方。

エラーは折り込み済みだから多少のエラーでは動揺しない。このメンタルが必要。猛烈な守備練習が活きるような難しい打球は1試合に1つあるかないか。そのために少ない練習時間を割くわけにはいかない。
割り切り方がすごい。受験勉強だって同じ。難問はみんなわからないし、滅多に出ないから捨てればいいんだよね。

球がストライクゾーンに入らないとゲームにならない。相手に対して失礼。開成のピッチャーは、打たれてもストライクを安定的に入れなければならない。ピッチャーはマナーの中心。

野球は運動神経やセンスはあまり関係ないから、僕に向いているんです。
確かにそうかもしれない。サッカーの場合、運動神経やセンスがないとどうしようもないところがありそう。残酷なスポーツ。しかし、野球はある程度まで何とかなる。野球の方がサッカーより、動きやルールが複雑だからではないだろうか。シンプルなスポーツは運動神経やセンスでほとんど決まってしまう。下手で何か運動をしたければ、より複雑なスポーツを選択すれば結果も出せて楽しいのではないだろうか。

もしかすると野球は「待つ」競技かも。「全力で待つ」。たしかに待ち時間が長いスポーツではあります。

守備をしていて「来るな!」というのは割り切った強い気持ちだからよい。いけないのは「来たらイヤだな」という迷い。

ふと思ったので、途中でも書く。ノンフィクションの作家というのは、自分の主張をしてはいけない気がしました。自分の主張があってそれを確かめるために取材をすると自分に都合のいい材料しか得られずにおもしろくない読み物になってしまいそうです。パッシブなパッションが必要な気がします。受身で驚きを全身で受け止めるような姿勢。ケルアック『路上』の語り手のような。高橋さんは優秀な書き手ではないでしょうか。

大事なのは反省しないこと。エラーを次に引きずらない。試合中はその瞬間に集中するといいんですよね。

監督の罵声も正確で論理が詰まっている。これがまたおかしい。

下手な人は、先に上半身が反応してしまう。下半身が遅れてしまう。体が自然に動くほどに練習はできないんですよね。

何やら野球の試合というより、野球に出会った人間たちの原初の姿を見ているようだった。

ここはゲラゲラ笑ったところ。「原初の姿」が映画的に浮かんできますよね。

グラウンドでやるのは練習ではなく、「実験と研究」(監督)。実験をして結果を踏まえて修正する。PDCAサイクルでもいいかもしれません。
練習時間が短いので、練習外での頭の使い方、準備、つまり仮説を立てて臨むことが大事ですよね。

ヒットになる確率は3割なので、「とりあえず振ってみる」ことが大事。確固たるプロセスを飛び越えること。ここでは、頭を使ってはいけないよね。

何も考えずにやれば捕れる。考えると捕れない。
これは小学校で野球部だった自分はよくわかります。センターを守っていました。フライが上がると何も考えずにできるときは、正確に落下地点に迷わず行ける。なんで落下地点がわかるんだろう?などと考えてしまうと迷いが生じて動き出しが遅れて捕れなくなってしまう。

「俺たちは必要十分な練習を徹底的に追求する。これが俺たちのプライドだ」(監督)
練習時間が短い。
仕事でも、必要十分を徹底的に追求すればいいのではないだろうか。必要以上な仕事をしようとして残業している人がいるように思えます。

家では完全にリラックスしたいんで、勉強は自習室で終わらせる。とりあえず全教科に触れる。自習室に入ったらまず帰る時間を決める。そうするとその時間までに終わらせるために一気に集中できる。
これが開成高校の生徒の勉強法。素晴らしいね。仕事術に使えます。「帰る時間を決める」というのは、自分の採用しようと思います。

野球をやってよかった。打席に立った時の集中力が試験に使える。監督の「圧」

  • そんなことでプレッシャーを感じているようではこの先、生きていけない。

大学受験で緊張するくらいなら大した人生じゃない。

野球は運動神経がないならないなりにやりようがある。哲学をしているみたい。

次の監督の言葉なんかも仕事術みたいです。

「必要なこと、思っていることを声に出す。声をかけられたヤツはそれに反応する。野球の監督がなんでそんなことを教えなきゃいけないんだ!」

仕事のチームでもこれができていれば、うまく回りますよね。

思い切り振って球を遠くに飛ばすのが一番楽しい。本能的に大胆にプレーしていい。ミスしてもワーッと元気よくやっていればいい。野球は「俺が俺が」でいい。

青木監督の言葉は新鮮。そこから一筋の希望が見えてくる。希望は知性から生まれる。

読了。開成高校の生徒たちに高校生男子特有の自意識過剰ないきがりがないですよね。開成の底の深さ、恐ろしさを感じました。

追記

小学校では軟式野球部でした。
ポジションはセンター。背番号8で一応レギュラーでした。
センターを守っていて、凡フライがこわかった。捕って当たり前、落としたらみんなに迷惑かける。
一方、ヒット性のライナーは大歓迎でした。捕ったら拍手、捕れなくても仕方ない。

打つ方はからっきし駄目でした。今わかるのは、自分はボールをよく見て打とうとしていたんですね。「ボールをよく見て打て」とはよく言われますが、実際、ボールを見ていたら振り遅れます。私がそうでした。みんなは、実際、タイミングで打っているんですよね、たぶん。私はボールを見て打っていたので常に振り遅れていました。右打ちなので、ヒットもセンターから右方向。小学生のライト前ヒットは当たりが良すぎるとライトゴロになります。

「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー

「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー

「弱くても勝てます」―開成高校野球部のセオリー―

「弱くても勝てます」―開成高校野球部のセオリー―