村木厚子さんの戦い方〜『日本型組織の病を考える』

村木厚子さんの本はたくさんある。
どれを手に取ればいいか迷うところだ。
自分は偶然、セールになっていた本書を手にした。
タイトルは『日本型組織の病を考える』だが、ちょっと大げさかなと読了して思った。
それほど批判的ではない。
検察批判以上に、本人の圧倒的なしなやかさを感じた。
なんというかそのせいで検事たちがなんとちっちゃい連中なのかと思わせる。
「検察というエリート組織の弱さ」36が際立っている。
笑える。
検察(笑)という感じだ。
しかし、検察は強大な権力を持っていることは確かで、佐藤優さんの本などを読んでも恐ろしいと感じる。
村木さんも検察との戦いは「神経戦」だったと。

村木さんは「日本社会の病理を変えていく力になるのが市民の力であることは間違いない」60と書かれているが、日本は「市民」がいまいち弱い気がする。
市民を育てるところから始めないといけないのではないか。

拘置所に入れられたらとにかく読書だな。
そしてノートをとること。
目的を絞ること。
これは女型の巨人という強敵に対するリヴァイ兵長の教えでもある(『進撃の巨人』)。
食べることと寝ることができたうえで、読書をして、今自分ができることに集中すること。
しかし、それは逮捕されなくても、今の日常でも心がけるべき生活だと思った。

検察のような失敗しても止まることができない組織は危ない。
多くの組織がそうしたサンクコストを切ることができずに損失を垂れ流してしまう。
典型的なのが、旧日本軍だろう。
この辺りは野中郁次郎さんの『失敗の本質』を読むと良さそうだ。
こうやって村木さんの本も多方面と接続するのだ。
村木さんは、マシュー・サイド『失敗の科学』を紹介されていて、読んでみたい本の一冊だ。

組織改善の処方せんとして、

  • 徹底した情報開示と説明責任
  • 建前と本音の解消
  • 失敗から学ぶこと

などが挙げられている。
建前で作られたルールを本音に近づけていくことは日頃から意識している。
なかなか組織を動かすのは難しいけれど。

官僚にも時々こういうスター官僚が出てくる。
村木さんの場合は、検察に逮捕されるという地獄から一転スターになったわけだが、普通は違う。
経済産業省の江崎禎英さんなどはスター官僚の一人だ。
こういう人たちの言葉は自分の仕事に機能してくる。
本書は、組織で働く自分にとって、仕事のやり方や身の処し方、姿勢など色々と参考になる本だった。