長塚京三主演、吉田大八監督、筒井康隆原作の映画「敵」を見てきた。
おもしろかった。
50歳のおっさんとして色々と考えさせられる映画だった。
結論としては、50過ぎた男は全員、死にたくなる映画だった。
始まりは、まるでモノクロのヴェンダース「PERFECT DAYS」なのも良かった。
PERFECT DAYSはファンタジーだったが、敵は老人男のみっともなさが満載だった。
比較するとおもしろい。
これ長塚京三でぎりぎりスクリーン上に耐えている。
一般人だと耐えられない。
しかし、大部分の男はこの程度であり、それを実行するかしないか。
以下ネタバレあり。
渡辺儀助、元大学教授、フランス文学の権威として尊敬されていても、元教え子に欲情して夢精してしまう。
70歳越えても男はこうなのか。悲しくなるよね。
知性があってもスケベおやじ。
性欲の問題は、おっさんにとっては大事なポイントになる。
体臭を気にして風呂に入る。
老体をスクリーンにさらすのは、PERFECT DAYSの平山にもあった。
プルースト「失われた時を求めて」に出てくる料理を作って元教え子(瀧内久美)に振る舞う。
瀧内久美さんって、こういう男のスケベ心を白日の下に曝してしまう能力を感じる。
怖い。
NHKのゾンビドラマで初めて見た時から、瀧内久美さんは美しくて怖い存在だ。
先立たれた妻が現れる。
夢だろうが、映画ではリアル。
その妻と元教え子の両方から、想像して一人でしたんでしょ?と詰められる地獄。
妻とお風呂に入るシーンは、マディソン郡の橋を思い出した。
先立たれた妻のコートの匂いを嗅いだりする情けなさは田山花袋「蒲団」を思わせる。
70歳過ぎてもまったく落ち着いていない心。
夢と現実が曖昧になるのはよくあるパターンだが。
表題の「敵」はほぼどうでもいい。
隣人のじいさんと犬を散歩している女性が射殺されるのは、高齢になって人間嫌いになって普段から憎々しく思っている無意識の反映かもしれない。
原作を読んでいないので何とも未確認だが、筒井康隆さんってフロイトをいつも踏まえていたのでは無かったか。
妻が「桐谷広人さんに感想を聞いてみたい」と。
確かに「敵」の主人公と同じくらいの年齢ではないか。
色々と考えてはいるが、とりあえず投稿して、必要があれば後から追記しよう。