先日の記事、
ポール・クルーグマン『さっさと不況を終わらせろ』の山形浩生の解説を読んだよ - シリアルポップな日々
に続いて今回は、クルーグマンの本文のレバレッジメモを中心とします。
自分はまだまだ経済学を勉強中なので、理解不足による間違いが多数ありそうなので了承願います。恥もそのままさらす練習です。
蛇足ですが、知らないということは、知的好奇心を刺激しますよね。
そして、クルーグマンの語り口とそれを翻訳する山形浩生さんは本当にそこをうまく突いてきます。おもしろくて勉強になるってサイコーですよね。
当面、リフレ派とか反リフレ派とかどーでもいいです。黒でも白でもネズミをとる猫がよい猫ですよね。アベノミクスを安倍さんの右寄りな政治姿勢や親学との親和性と一緒に叩く知識人の人がいますが、それはちょっと雑な気がします。
photo credit: Taekwonweirdo via photopin cc
レバレッジメモ
- ユーロは失敗?
しかし、実験に失敗はつきものです。ユーロの実験の失敗は多くの人を死に至らしめるものでした。立派な理念では飯は食えず。仕事が無ければ、ユーロを食えばいいじゃない。
働きたいのに仕事が見つからないと大いに苦しむ。所得がないからだけではなく、自分の価値が低下したように感じるから。
日本って、何で失業率が話題にならないのだろう?
「長期的には我々はみんな死んでいる」(ケインズ)
これは、長期的な視点でという言い訳への批判のようです。若者たちへの教育は重要。だけど、日本の財務省は、そこを削っています。長期的な視点での財政健全化のためらしいです。
- ゴドウィンの法則
「あきらめないで」
岡村孝子さんを思い出した。
宇宙人が攻めて来れば、大量支出で景気が回復するかもしれない。
世界が今必要としているのは、政府がどんと支出することだ。不況を終わらせるのは簡単なんだよ。
というわけで、クルーグマンは、政治的な姿勢として安倍首相は嫌いだけど、経済政策は結果的に完全に正しいと言っているわけだろう。そんなクルーグマンは意外にも知的に誠実な感じがします。
- ハイマン・ミンスキー
ミンスキーは過去三回の大規模な金融危機のうち、およそ九回を予言していた。
レバレッジに注目したミンスキー
金持ちのほとんどは、スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグのような価値を生み出してはいない。つまり、その高額な報酬はほとんど多すぎるのだ。という風にはクルーグマンは書いていないけれど。
一部の大金持ちは、価値を生み出していないのに巨額の報酬を得ている。そいつらに有利な金融システムになってしまった。韓国のドラマを見るといい。必ずと言っていいほど、そんな財閥の連中が出てくる。見ていてうんざりするほど金持ちが出てくる。
日本の場合、失業率には現れない悲惨がある。ブラック企業に勤めているサラリーマンは、失業者ではなく失業率にはカウントされないのに、悲惨。
国債の暴落?あれ、日本の長期金利はちっとも上がらないねえ。
しかし、どう転んでもカイル・バスのような人は儲けるようになっているのかもしれない。くやしいなあ。悔しいです(アメリカザリガニ)。
日本の場合、負債は1990年代から上昇していて、特筆に値する。今のアメリカと同じく、日本は過去10年以上にわたり、すぐにでも債務危機に直面するといわれてきた。でも危機はいつまでたってもこないし、日本の10年国債金利は1パーセントほどだ。日本の金利上昇に賭けた投資家たちは大損ばかりしていて日本国債を空売りするのは「死の取引」とまで言われるようになった。
自国通貨で借りるか、外貨建てで借りるかで大きな違いが生じる。
イギリス、アメリカ、日本は前者。イタリア、スペイン、ギリシャ、アイルランドは後者、つまりユーロ。
短期の財政赤字に注目するのは愚か。日本の場合、税金をアップしたい財務省が、財政赤字を口実にしてはいないか?という視点が必要なのでは?もちろん、財務省も一枚岩ではないだろうけど。
財政支出カットの見返りは小さい。
山崎元さんも「累積黒字」が大事だと言っています。
民間に賃上げを要求するくらいなら、まず公務員の給料を上げたらどうだろう?
公務員と民間ってつながっているから、ちゃんと回るんじゃないの。
今のところ公務員は不満の捌け口にされていますよね。
- 自分が間違っていたと認めること
- データをあっさりと無視すること
- データがウソをついていて、政府が真のインフレ率を隠していると主張すること
誰も自分の間違いを認めない。多くの人が二番目を選ぶ。でもかなり多くの人が第三の選択肢を選ぶ。なんか既視感が、、、あるよね。
ユーロは失敗?
統一通貨の設立にはトレードオフがある。
- メリット=効率性が高まり、事業費用が減る。事業計画もおそらく改善する。
- デメリット=柔軟性が失われる。
そのデメリットが現在の欧州危機。
ヨーロッパは一体じゃない。独自の予算。独自の労働市場。そして、自国通貨を持たない。それが危機を作り出す。
デフォルトはアメリカでは実は起こらない。実質的にFRBはお金を刷って政府債を買う。また、イギリス、日本など、自国通貨で借り入れて、独自の中央銀行を持つ国でも絶対に起こらない。
絶対だろうか?ここは勉強のしどころだと感じます。
でも、いまユーロに加盟しているあらゆる国ではこれが起こりうる。
ギリシャ化の間違い。トラブルに陥ったすべての国が放漫財政でそうなったと決めつけている。診断が間違っているので、処方箋も間違う。財政規律こそが解決策なのだという間違い。
格付け機関って何だろう?
宣告したのは、市場じゃない。ただの格付け機関でしかなかった。S&Pのような格付け機関はお仲間すべてと同じく、すぐに有害廃棄物と化した金融商品にAAA格付けを与えていたところだ。
細かいところはおそらくあまり重要ではなくて、本当に必要とされているのは「ルーズベルト的な決意」。
アベノミクスは、そうやっている(今のところ)。
残念ながら、バーナンキ議長はバーナンキ教授の助言に従わなかった。
火事で火を消す時は、一気に水を大量に投入する必要があるという感じ?家が水浸しになることを恐れて、ちょろちょろ水をかけていてもかえって火を消すことができずに全焼してしまうという、、、それが白川日銀だった?理論は正しいのかもしれないけれど、それで?という感じ。
今後、五年間にわたり、そこそこ高めのインフレ率、たとえば4パーセントくらいを約束すべきだ。日本の2パーセントは低いくらい?
成功するだろうか?絶対とはいえない。でもバーナンキがかつて論じていたように、重要なのはやってみることだし、一発目で不十分ならさらに試し続けることだ。それがルーズベルト的な決意かな。
相関と因果を混同する罠
訳者(山形浩生)解説
手法も明快。ケインズ的な財政出動をやろう。赤字国債を出して、大量の公共事業をやろう。いままでの景気刺激策は小さすぎる。中央銀行はそれを金融緩和で徹底的に支援すべき。それに伴う財政破綻だの金利上昇だのは、悪しき固定為替制度の下にある(=独自通貨を持たない)、ユーロ圏のスペインやイタリアのようなかわいそうな国以外は、まったく心配する必要なし。
- 「恒星系間貿易の理論」(1978)
クルーグマン:恒星系間貿易の理論 - P.E.S.
手遅れとはいえ、復興をまともにやって、教育やインフラ補修にどんどん予算だそうよ。必要なら予算執行の細かい基準とか緩めようよ(←これ本当に大事)。
この解説が書かれたのは、2012年6月30日。まだ民主党政権だった。そこから今、いい具合に変わったと思う。自民党、親学とか私は好きではありませんが、アベノミクスは今のところ完全に正しいのではないでしょうか。
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