- 作者: 夏目漱石
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1990/04/16
- メディア: 文庫
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人間社会でストレスを感じているあなたには、非人情を身につけることをおすすめします。そのためのテキストは夏目漱石「草枕」です。
文庫本数百円の投資で人によっては劇的な効果が得られます。大学二浪し代々木ゼミナールに通っていた私は「草枕」に出会い、世の中の見方が大きく変わりました。
グレン・グールドというピアニストをご存じですか?
グールドの晩年の愛読書が「草枕」でした。グールドがストレスフリーのために「草枕」を読んでいたかどうかは知りません。私は、グールドが読んでいたという理由で「草枕」を読み、非人情を身につけました。
「非人情」は世の中に対するattitude=構えです。
様々な苦悩をもたらす人情に対して、画を見るように対峙します。
そもそも「草枕」の語り手は、画工=絵描きでした。
人情を画として見れば、苦悩はありません。もう一段階レベルアップすれば、自分自身をも非人情で見ることが可能になります。そうすれば自らに降りかかる災難も、距離感を持って見ることができます。
お笑い芸人の言う、ネタになっておいしい、という感覚に近いものがあるかもしれません。
こういう状態に達することができればもはや無敵です。
こう見ると非人情は、天使の視線とも言えそうです。この天使の視線のテキストは、映像作品ですが、ヴェンダース監督の「ベルリン・天使の詩」が最適だと思います。
もっともこの映画では、天使が人間に恋をしてしまうのですが。
ちなみに死神が人間に恋をすると「デスノート」ですか。
ともあれ、実践的には、非人情を身につけると美人に強くなります。画として美人を眺めれば、対峙しても緊張せず、翻弄されてもオロオロせずに済みます。非人情ですもの。
「草枕」では語り手の画工は、那美という美しい女性を画として見ることで、翻弄されつつも彼女にどっぷりのめり込むことはありませんでした。
ちなみに非人情は不人情とは違います。
非人情でありつつ募金をするのは「あり」です。融通無碍の境地です。