連続ドラマ『デート〜恋とはどんなものかしら〜』は作り手の距離感がおそらく完璧なドラマでした〜作り手が感情移入しない表現

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photo by Jerad Hill Photographer

月9でありながら、一見、期待できないキャストとタイトル、それが『デート〜恋とはどんなものかしら〜』でしたが、見事に期待を裏切られました。良質な韓国ドラマ、ラブコメに通じるクオリティで笑えて泣けるドラマ。
妻の感想を聞いて、途中から見ました。
最終回も完璧なテンポでした。
テンポ?
そうたとえば『ウロボロス』は最終回に近くなると、役者が無駄に感情移入する場面が多くて、白けました。長過ぎる場面の多用はかえって私を引かせてしまうのです。
その点『デート』の最終回はテンポも落ちなかった。それはおそらく作り手側が感情移入しておらず、フラットに作っているからじゃないかと感じたのです。
八代亜紀さんが歌に感情を込めては駄目だ、そこは聴き手が入れるから、と語っていたというエピソード。その真偽はわかりませんが、まさしくそうだと思います。作り手や俳優があまりに感情移入し過ぎると、見る側が引く。そういう失敗例があるのです。
『デート』は完璧なラブコメでした。これで泣けるんですよ。作り手の作品に対する距離感がちょうどよかったんじゃないか、というのは、あくまで私の勝手な想像です。

MOVIEラボ

そんなことを考えていた時に、録画していた岩井俊二さんの『MOVIEラボ』を見たら、答えがある気がしました。
小津安二郎監督の演出の話。俳優に意味を説明せずに具体的な行為だけを演技させていた、そこに俳優のプライドはあるのか?という役者の立場での常盤貴子さんの悩み?
その疑問に対する大林宣彦監督の答えが私の疑問にもパーフェクトに答えていた。正確な言葉じゃありませんが次のようなこと。
「俳優はここだけやってくれれば、後はお客さんが想像力で見てくれるよ」
これって八代亜紀さんの歌とまったく同じですよね。

その後に、佐々木昭一郎さんの映像が出てきて二重に驚きました。キター!って感じ。あの映像の魅力も強烈ですよね。女性が決して美人ではないような気もするのですが、佐々木さんの映像になると不思議に惹きつけられるんです。

以上、結論としては、映画やドラマの作り手や俳優は自分の作品に対する思い入れの感情移入の仕方に注意しないと伝わるものも伝わらない、ということでした。自分の感情を封印してフラットに表現した方がかえって伝わるんじゃないかという仮説です。

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デート ~恋とはどんなものかしら~

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