いつもながら羽生善治さんはただのプロ棋士ではありません。
本書は、仕事術の本でもあり、人生の本でもあります。「考える生き方」(finalvent)の本とも言えるでしょう。
レバレッジメモ
対局中のほとんどはうまくいかない状況を考え続けている。
これは、私の人生においてもそうです。常に悪い状況を考えています。だからこそ、生き延びることができているんじゃないかとは思います。
恐れを持たずに決断するためには、自分にとって不要なものを捨てていく必要がある。
局面を他人事のように見る。客観的な視点を持つ。これは、夏目漱石の「非人情」に通じる考え方ですね。
休憩ではあえて思考をスローダウンさせるとか。
不調の時は、たとえば今までの生活習慣を変えてみる。
技術的にはプロ棋士の間に基本的に差はない。後はメンタルの強さ、大局観、バイオリズムといったものが総合的に現れるのではないか?
うまくいかない時は、他力思考。相手に「手を渡す」。
色々な人の話やアドバイスを聞いて、それを採用するかどうかを決める時に、自分の気持ちが軽くなるかどうかを判断基準にする。
大局観。「いかに読まないか」。省エネでたくさん考えなくて済む。
裏付けとして「読み」を使う。
玲瓏。透き通った静かな心持ち。これは、GTDの著者の考え方に通じる。何が来ても大丈夫な心を得ることがGTDというタスク管理手法の最終的な目的のような気がします。
そして、最後は主観で決める。
主観といってもその人の経験から来るものですから、根拠は実はあるんだと思います。
調子をはかるバロメーターは、いかに「スパッと迷わずに見切って手を選ぶことができるか」。
心の調子がよくないと、たとえば買い物でもたくさんの品物から選択できなくなりますよね。動けなくなります。行動できなくなります。
選択肢があるほど後悔しやすくなる。だから、割り切り方が必要になる。
自分の場合、未来の不安は大きいですが、過去の後悔は少ないようです。これは自分の傾向としておさえています。
メニューが少ない、というのは、たとえばiPhoneのAppleがそういった戦略をとってきました。
時間に追われている状況の方が能力が発揮できる。きついことはきついが、プレッシャーがかかることで感覚が研ぎ澄まされる。
仕事でも決算時期にならないと本当に頭が働かない、ということはありますね。
集中するためには少しくらい疲れているほうがいい。無駄な力が入らず、雑念も無く、余計なことを考えなくなる。
これは、少し体調がよくない時の仕事に感じます。体調が良すぎると頭が働きすぎて余計なことをして失敗することも多いです。一方、ちょっと体調がよくないと、優先順位も考えてシンプルにゆっくり仕事をするのでミスも少なくなります。あるいは、セックスした次の日は仕事がよくできますね。これには心の充実感も関わってくると思います。羽生さんは、セックスの話などはしませんが。
恋人とつき合い始めた頃などは、仕事が忙しくても睡眠時間を削って会いに行ったりしても意外と仕事に悪影響は無いんじゃないかと思います。
起こった感情を直接すぐに表に出さずに変換して、その状況に合わせて気持ちをプラスに切り替える。
一呼吸おくとか、具体的にはどんなアート=技術があるのだろうか?
ちょっと思い出したのは、『クレヨンしんちゃん』というアニメで、ねねちゃんのお母さんはしんのすけに対して苛々した時にはこっそり別の部屋に行って、大きなうさぎのぬいぐるみをガンガン殴っています。それも一つのアートですよね。
夏目漱石の『草枕』では、主人公の画工は俳句にすることで自分の感情をコントロールします。
こんな時にどうすれば詩的な立脚地に帰れるかと云えば、おのれの感じ、そのものを、おのが前に据えつけて、その感じから一歩退いて有体に落ちついて、他人らしくこれを検査する余地さえ作ればいいのである。
これが「非人情」のアートですね。
今、負けが続いているのは、力をためて充電しているときだ。結果が出ていない時の考え方。
たとえば2012年は本の執筆依頼があり、fmjへ誘ってもらったりと生産性の高い年でした。2013年は今のところfmjの記事とブログを地道に続けています。派手な仕事はありません。そういう時は、インプットしている時期だと考えます。
基本的に営業活動はしません。それは、仕事が別にあることもあります。また、営業するということは多少なりとも自分を曲げる必要もあるでしょう。それをやると本当の仕事になります。
- ミスの割り切り方、どう受け止めるかというメンタル
- ミスをしても大きなダメージにしないようにするフォローの仕方
たとえばインデックス投資で言えば、前者は新聞などの株価ニュースに一喜一憂しないことでもあり、後者は毎月定額を積み立てて行くような方法になるでしょうか。個別株式投資の場合は、「損切り」といったことでしょうか。
ミスへの対応
- まず一呼吸おくこと
- 一旦その場を離れたり、お茶を飲んだりする。
- 現在に集中すること
- 局面は戻らないので後悔しても仕方ない。今何をすべきかに焦点を合わせる。
- 優劣の判断を冷静に行うこと
- 能力を発揮する機会だととらえること
- ピンチはチャンスという考え方ですね。
- すべてに完璧さを求めないこと。自分の可能性を広げるチャンスだと、とらえること
不利なときほど、ギャンブルはしない。
これはなるほどなと思います。一発逆転を狙わない、ということですね。
じっと我慢すること。相手がミスをすることもある。
ラグビーで平尾誠二さんが同じようなことを言っていました。流れが悪い時は、無理をしない。確か羽生さんと対談したりもしていた気がします。
何もしないと無意識にブレーキを踏んでいるようなところがあるので、意識的にアクセルを踏む。適切なリスクをとらないとかえって危険になる。
年齢を重ねると保守的になってしまう。
- リスクは小出しで取る
- リスクを取ることへの恐怖との付き合い方
- リスクを取ること自体の快感には注意する
- 車でスピードを出すなど
- 結果だけではなく、「納得できるか」
- 時代や環境に合わせてリスクを取る
年齢ごとの強みがある。
将棋を覚えたのは小学一年生の時。のめり込んだのは小学二年生の夏休み。将棋大会ですぐ負けてしまった。それから週1回の将棋道場に通うようになった。
自分の長男も小学二年生から将棋教室に週1回通うようになって、今のめり込んでいるけれど。
長女はヤマハ音楽教室を嫌々やっている。長男はのめり込んでいる。やっぱりのめり込まないと上達しないよね。
自ら環境を作る。作れなければその環境の中でベストを尽くす。
目標設定も実行も得意ではない。目標は負担になる。日記も続いたことがない。
自然に普通に続けられることでないと長続きしない。
サッカーのフォーメーションは、将棋の駒組と似ている。
場面で数的優位を作るところとか。
本質は勝つためより、価値を創るため。
自分の人生をたとえると、サイコロ。転がしてみて初めてどこに行くかわかる。
短歌や俳句と同じように将棋は盤上の限られた舞台の中に無限の可能性がある。
情報メタボにならないために意識的に出力の割合を上げていく。話したり、文章を書いたり、なんでもいいからアウトプットを意識的に増やすといい。
日々の中でとりあえず自分ができることをやって、後はタイミングを待つ。いつかチャンス、流れはやってくる。経験上。
道場に入ると普通は8級ぐらいからスタートする。しかし、あまりに弱いので、15級という通常にはない級を作ってくれてそこからスタートした。弱すぎて相手もいないので、席主がずっと駒落ちで相手してくれた。
NHKの将棋放送の話を延々としていた。
長男もずっと将棋の話をしています。今は可能性としては羽生さんと同じところに立っているはずです。
渡辺竜王が竜王戦以外でも結果を出してきて、いよいよ羽生さんとの二強時代になるのか、という感じがするのですが、森内名人が名人戦で羽生さんに先勝しましたね。
あと、Twitterで追いかけた電王戦第四局が凄まじいものでした。塚田泰明九段の泥臭い粘り。プライドって何だ?というものを考えています。
結果を出し続けるために (ツキ、プレッシャー、ミスを味方にする法則)
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