アナザー・ストーリー・オブ・リアル鬼ごっこ〜山田悠介「リアル鬼ごっこ」

リアル鬼ごっこ

リアル鬼ごっこ

あっという間に読了。結末は予想に近いものだった。そのままでは「24」のように後味が悪いので別のストーリーを考えました。以下、ある意味ネタバレになりますのでこれから読もうという人、映画を見ようという人は注意してください。
リアル鬼ごっことは、ある日王様が自分と同じ佐藤姓が多すぎることに耐えられなくなって佐藤姓を根絶するために考え出した殺人ゲームである。
主なルールは、

  • 12月18日から7日間、夜11時から1時間を鬼ごっこの時間とする
  • 逃げるのは全国に500万人はいるとされる佐藤姓の人々
  • 鬼は任命された兵士100万人
  • 鬼には「佐藤探知機ゴーグル」をかけさせる
  • 鬼は1日に1人以上の佐藤さんを捕まえないと罰せられる(鬼に任命された兵士たちもこんなことをやるのは嫌だったが、これでわざと捕まえずに7日間やり過ごすという選択肢はなくたった)
  • 鬼は佐藤さんをみつけたら警戒音を発生させて佐藤さんに知らせて鬼ごっこスタートとなる
  • 捕まった佐藤さんはすみやかに殺される

▼鬼に任命された兵士の中にシャア・アズナブルのような男(以下「シャア」)がいた。頭はきれ、勇気があり、行動力・決断力に優れ、部下に慕われていた。その男がリアル鬼ごっこの開始をひかえ、他の100万人の兵士たちにひそかに命じていた。
「12月18日、鬼ごっこ1日目がスタートしても20分は待機しろ。その間に俺が片をつける」
シャアは王様の側近たちに根回しをして、鬼ごっこスタート5分前に10分間の王様への面会を設定させた。計画の実行において味方は多い方がいい。いざという時、馬鹿な王様へくだらない忠誠心を見せる愚か者がどのハリウッド映画にもいるからだ。そして現実はハリウッド映画に似ている。じいは放っておいていい。実の弟である王子は第二段階の実行のために計画に取り込んでおく必要がある。

▼鬼ごっこ当日12月18日、夜11時5分前、シャアは王様の前にいた。シャアは今回の鬼ごっこも含めた王様の偉業を称えた。
「お前は佐藤を捕まえに行かなくて大丈夫なのか」
「私は30分もあれば5人の佐藤を捕まえてみせます」
「頼もしいぞ」
いよいよ鬼ごっこスタートのサイレンが鳴った。
シャアは佐藤さんを発見した警戒音を発するとすばやく王様にとびかかり、苦もなく王様を組み伏せた。側近たちは動かない。じいはあっけにとられている。計画を知らない側近の一人が銃を取ろうとした右手を隣にいた側近が止めた。目で合図する。計画に加担している側近が大半だった。ようやく事態を把握し、声を上げようとするじいを王子が何もするなと目で制止した。
「何をするんだ」苦しそうに王様が言った。
シャアは大きな声で言った。「私は王様の命に従い、早速佐藤を一人捕まえました」
「ばかな。私は王だぞ」
ハリウッド映画の悪党はここで時間をかけるからいつも逆転をくらう。シャアは迷わず王様の喉をナイフでかき切った。血にまみれる玉座。倒れる王様の体。シャアはプロの技術で返り血など浴びない。すみやかに玉座を降りると王子を促した。

▼王子は血まみれの玉座に上がった。するとあらかじめ準備していたテレビカメラが王の間に入って来て、王子はカメラを通じて全国に宣言した。
「王が鬼ごっこの結果、命を落としました。すみやかに王子である私が王位につくこととする。そして、前王の命で先程スタートした鬼ごっこの即時終了を宣言する」
こうして、リアル鬼ごっこはたった一人の佐藤=前の王様が捕まっただけで終了した。