『サピエンス全史(上)』を読んだよ〜狩猟採集民の幸福

ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史(上)』を読んだ。下巻はまだ。著者の名前は、進撃の巨人っぽいね。
刺激的な本だった。おもしろくて、たくさん付箋を貼って、ポメラDM200 で引用メモを作りながら読んだ。師走に1週間で読み切った。

ホモ・サピエンスが超人たちに取って代わられるか?という未来は、カーツワイルなどのイメージと通底している感じがした。ガンダムで言えばニュータイプだね。

ホモ・サピエンスが世界を支配したのは、言語の力。
言語による認知革命があった。
言語によって、まったく存在しないものについて情報を伝達できるようになった。虚構を作るようになったのだ。
物語によって、多くの人間をまとめて、動かしていく。アメリカ独立宣言も一つの大きな物語だ。人権、民主主義などもそうだ。
卑近な話でも、仕事においても、物語を作る力が必要だ。それは事実である必要はない。他人を説得し、納得させ、動かす物語を作ることができる人が、仕事ができる人だ。規則やルール、事実にこだわって仕事を滞らせる人は、その点を理解していない。合理性だけじゃ、人は動かせないのだ。
「想像上の秩序」と書記体系によって、人類は大規模な協力ネットワークを維持できるようになった。そして「帝国」は拡大してきた。全体的には人類は、一つの帝国に収斂していく方向に歴史として進んでいる。
単純な人々にとっては、スター・ウォーズのように「帝国」は絶対悪なんだろうけれど、実際はそんなに単純な話ではない。本書を読むと、それがわかる。

本書では、フランス革命における神話のダイナミックな転換を事例に挙げているが、日本では明治維新がそんな感じだろう。戦後にしても、日本人は全体として転向が早い。節操がない変節を繰り返した坂本龍馬が人気なのもその辺りかもしれない。

古代の狩猟採集民が意外と健康的だったという話もおもしろい。平均寿命が短いのは、子どもの死亡率が高かったのが主な原因。つまり、子ども時代を乗り越えれば、現代人とさほど変わらず長生きできた。平均という数字には注意する必要がある。
狩猟採集民は、特定の主食に頼らず、多様性のある食事をしていた。また、そのため特定の食物が手に入らなくてもさほど困らなかったらしい。その多様性が健康の源だったようだ。むしろ、主食に頼るようになった農耕民の方が不健康になったのだ。現代人の肥満の問題も農業革命以降の問題。パレオダイエットなどは、よく知らないが、その辺りの知識に基づいているっぽい。
狩猟採集民は感染症の被害も少なかった。感染症のほとんどは家畜に由来し、また人口密集もしていなかったからだ。

「私たちの祖先は自然と調和して暮らしていたと主張する環境保護運動家を信じてはならない」p100 という言葉も痛快だ。ホモ・サピエンスは多くの動植物種を絶滅に追い込んできたのだ。

農業革命が、個人によって幸福に結びつかなかった、という指摘も刺激的だ。むしろ、人口爆発と支配層の誕生につながった。要するに、ゴキブリと同じように生物として数を増やしただけなのだ。
「犯人は、小麦、稲、ジャガイモなどの、一握りの植物種だった。ホモ・サピエンスがそれらを栽培化したのではなく、逆にホモ・サピエンスがそれらに家畜化されたのだ。」p107
この認識の転換には驚かされた。啓蒙的である。目が開いた!人類は、米を支配していると思い込んでいるが、実は米に支配されているのだ。小麦や米は、人類を家畜化して、自分たちの領域を世界中に拡大してきたのだ。
また、古代人の骨格を調べると、農業革命のせいで、椎間板ヘルニアなどの疾患にホモ・サピエンスは苦しむようになった。この辺りは『GO WILD』とも接続する。

人の体は、狩猟採集、すなわち運動に向いているのだ。第一歩としては、歩くことを自分としては意識している。『BORN TO RUN』のようなトレイルランニングまで一気に突っ走る必要はない。仕事中もできる限り立ち上がり、動くことを心がけている。現場に足を運んで考える。現場に歩いていく間に色々と思考ができる。
さらに、メンタル面においても、狩猟採集民の方がおそらく幸福だった。それは長期的計画が成り立たない生活をしているためだ。矛盾するようだが、農業のように未来のことが計算できないからこそ、多くの心配事を免れたのだ。どうしようもないことを悩んでも仕方がなかったからだと。今を生きていたのだろう。農業革命によって、未来という時間も生まれた可能性がある。

論点はたくさんある。一つずつ深めていけば、それだけでブログ記事が書けるし、アカデミックな学者であれば論文が書けるだろう。自分は、アカデミックなポジションを持っているわけではないので、こうやって自由に書くことができる。楽しい。これからも、色々と雑多に考えていくことができる。

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