司馬遼太郎さんの『世に棲む日日(一)』を読んで、一番残ったのは、吉田松陰の母である杉滝の性格です。
「苛烈ささえ、彼女にとっては陽気な詩のたねになった」とか、「聡明ということのみが本来陽気のためになりうるものであるということを、彼女ほどその一身で具現した婦人はあるいはめずらしかったかもしれない」と評されています。要するに、底抜けに乾いたユーモアを持っていたようです。大河ドラマ『花燃ゆ』では、檀ふみさんが演じる役ですね。私は、その明るさこそが本来の知性ではないかと思いました。
年頭のブログで、よいことは何も起こらない、悪いことはたくさん起こるだろうと不安を煽る予言をするのは、本当の知性ではないと思います。
また、思い出したのは、浅田彰さんか中沢新一さんが言っていたマルクスの家庭の様子です。マルクスの家庭は家計が苦しかったようですが、マルクス独特のユーモアからその家庭には笑いが絶えなかったそうです。
自分の言葉に引きつけると、フラットなユーモアがポイントだと思います。現状認識は悲観的でも構いません。しかし、意思や行動においては楽観的であればいいんだと思います。「認識においては悲観的、意思においては楽観的」というのは確かユダヤの諺かグラムシの言葉だったかと。
世の中をフラットに非人情に眺めれば、そこに乾いた笑いが生まれるのではないでしょうか。
福田和也さんが書いていた「此岸を「彼方」といsて生きる明確な意志さえあれば、人生は「甘美」な奇跡で満ち溢れる」(『甘美な人生』)という言葉も繋がります。
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