モチベーションで仕事をするのは二流

Finish

タイトルは、煽り気味で。
相原孝夫さんの『仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか』を読んでいて、いちいち納得している。
相原さんは、自分の息子が剣道に行きたがらないのを無理矢理連れて行けば体を動かしているうちにやる気が自然と出てくる、という話を書いていた。それで思い出したのは、自分のブルーマンデー対策だ。
何度かブログにも書いている。通常の月曜日でも、連休明けに久しぶりに出勤する時も、やる気、モチベーションはかなり低くなっている。そういう時は、とにかく仕事のことはどうでもいいから、自分の体を職場まで運ぶことに集中する。それだけやればいいと諦める。そして、実際、何とか自分の体を職場に運んでしまえば、後は業務開始時間となり、書類をぼんやり処理したり、かかってきた電話に対応しているうちにノリが自然と出てくる。モチベーションなどは必要無いのである。
仕事にモチベーションを持ち込むのは、仕事を自分探しか何かと勘違いしているのではないか。そんな気もする。

モチベーションに関わらず、上機嫌に振る舞うことは社会人としてのマナーなど、他にもいちいち社会人に機能することが書かれているので本書は良書だと思う。「モチベーション0.0」という提唱はいいと思う。

上司は部下の邪魔をしないこと、モチベーションを削がないようにすること、というのも、今の自分に染みいる。
はっきり言って、部下の仕事のやり方を見ていると苛々することが多い。我慢できずについ、口出しをしてしまう。しかし、基本的には部下のやり方を尊重すべきなのだろう。そして、問題が発生すれば上司として各方面に頭を下げる。そこで始めてやり方のまずい点を指摘すればいい。それくらいの忍耐が必要な気がする。キーボードを叩く音がうるさい、など絶対に指摘してはいけないのだろう。それはその音を気にするこちら側のメンタルの問題だから。

ちょっと思うのは、モチベーションって色んな人が色んな意味で使っていて、必ずしも一致していない、という問題もありそう。広義/狭義のモチベーションとか。定義も明確にしないと議論にならないよね。

自分のブログのタイトルに「シリアルポップ」という言葉が入っているが、これは、シリアルのようにポップに軽く生きる、というロックな決意で作った造語なのである。仕事も、シリアルポップに軽やかにやれば、モチベーションなど必要無いだろう。

ここで、モチベーションについて考えていたら、九州大学の総長をされている久保千春さんの文章を見てしまった。

 厳しい練習に主体的に取り組むには、高いモチベーションを維持することが必要であり、モチベーションを高めるためには、目標設定と内発的動機づけが重要である。(「スポーツの意義・効果とメンタルトレーニング」『IDE現代の高等教育』No.592・7月号)

この言葉は、現在の常識的な考え方だと思われる。ちなみに久保先生は、心身医学の専門家、医者である。
ふと思ったのは、モチベーションという言葉は、フロイトの「無意識」と同じようなフィクションなのだろうということ。がんやウイルスと違って、無意識はその実体を測定できない。いわば仮定のもので、それは治療に機能するフィクションとして認められてきたものだろう。モチベーションも似たような実体の無い概念で、それが機能するのであれば使えばいいが、機能しないのであれば批判的に乗り越える必要がある。相原さんは、そういう意味で、モチベーションは機能しないのではないか、と主張されているようだ。こういう意見に対して、久保さんはどう答えるだろうか?

ちょっとずれる。久保さんの話は、スポーツ選手のモチベーションの話だった。たとえばオリンピックで金メダルを目指すのであればモチベーションは必要なのか。それでも、以前どこかで読んだマイケル・フェルプスの厳密なルーティンの話を思い出せば、モチベーション0.0でもいい気がする。自分なりに考えているのは、モチベーションに頼って競技をしていると、タイミング良くオリンピック本番にモチベーションの高いピークが合えばいいが、そうでないと結果も出ない気がする。フェルプスが金メダルを複数個とるような安定した力を発揮したのは、モチベーションに頼らずにルーティンを重視していたからではないか、と思う。マッケンローより、ボルグの方が安定して結果を出したのもモチベーションに頼らなかったからではないか。

いずれにせよ、長期に渡って結果を出すにはモチベーション0.0の方が良さそうである。そして、おおかたのサラリーマンは、4年に1度ではなく、数十年に渡って仕事を続けるのだから、やはりモチベーションに頼らない方がいいように思える。

一点、山一證券の廃業後の社員の働きぶり(過労死含む)を肯定するような箇所には疑問を感じた。しかし、それは本書の小さな箇所に過ぎない。

過去記事を検索したら、次のような記事を見つけて、自分で考えていたことだと改めて思う↓
akizukid.hatenablog.com