分散思考~森博嗣『集中力はいらない』

森博嗣さんの『集中力はいらない』を読んだ。
要するに、自分のスタイルは自分で作らないといけない、ということだな。

読んでいて、中学生長男に読ませたいと思った。
本書は、受験勉強のやり方にも通じる。
一般に、受験勉強も集中しろ、と言われるが、それに合わない子どももいる。
自分には集中力が欠けているから、受験は駄目だ、という呪いをかけられている。
そういう子どもにとっては、森さんの方法は参考になるのではないか。
教師は善意で生徒に呪いをかけることがある。
本書は、その呪いに対する解毒剤になり得る。
こういった本はどんどん買い与えよう。
息子が仮に読まなくても、自分で再読するから無駄にはならない。

また、財務省的な「選択と集中」批判にも本書は使えるかもしれない。
そういう使い方は、森さんの本意ではないかもしれないが、使えるものは何でも使えばいい。
財務省は、国立大学法人運営費交付金のすべてを評価対象にして競争的な予算にしようとしている。
一方、基礎研究においても重要なのは「分散」である。
要するに、予算はばらまいた方がいい。
これは「選択と集中」は真逆の戦略であり、財務省的な発想では科学技術立国はおぼつかない。
そんなこともわからない財務省の官僚は、やっぱり所詮文系秀才集団なのだ。
まったく財務省が国を滅ぼすよ。
いや、この辺りの議論は、アベガー的に荒いのはわかっている。
もっと丁寧に財務省批判してくれる人がいればいい。

成功は、集中ではなく、分散の結果(p140)という箇所は、クリック・モーメントに接続した。
無数の小さな賭けの結果、たまたま(偶然)成功したのである。
この無数の小さな賭けこそが、まさしく分散だろう。
研究者としても、複数の問題を抱えているのが普通だと森さんも書いている(p141)。
ノーベル賞を受賞した本庶佑さんの研究もメインは「抗体のクラススイッチ」であり、PD-1は言わばサイドビジネスのようなものだったらしい。
プランBと言ってもいいかな。
ジョン・マリンズ+ランディ・コミサーの本を読んだのは、4~5年前なので記憶は薄いのだが、プランBが大きく成長して利益をあげることはビジネスの世界でも珍しくない、という話だったと思う。
財務省が推奨する「選択と集中」だと、このプランBを無駄として切り捨て、プランAに集中するので、成果が出なかった時のダメージが大きい。
成果が出ないと財務省はすぐに国立大学のせいにするのだが、そもそも「選択と集中」戦略が間違っているのではないか、という自己分析が欠けているのでどうしようもない。
戦時中の旧日本軍と同じである。
やっぱり財務省が日本を滅ぼすような気がしてきた。

投資だって、リスクを分散させることが重要だ。
この点、マンガーなどは集中すべきと主張している。
ただ、集中といっても、一つではない。
インデックスファンドでは、飛び抜けて勝つことはできない、と言っているだけだ。
バークシャーハサウェイだって、独自に分散投資している。

自分のブログを顧みても、まったくの分散思考の産物だとわかる。
そして、色んな思考が接続する。
接続読書なんかも、分散思考的だね。
しばらくは「分散思考」をキーワードにして、色々考えると思う。

プランB 破壊的イノベーションの戦略

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