観察力を磨くためにアートを見よう〜『観察力を磨く名画読解』

エイミー・E・ハーマン『観察力を磨く名画読解』を読んだ。
知覚の技法を学ぶことで、世界が変わる。アート作品を観ることは、その練習・訓練にぴったり。そういった内容だった。
常々、自分が上の空で生きていて、人や物事を観察できていない、という課題を自覚していたので、すっと入ってくる本だった。

人は目ではなく、脳で見ている。だから、訓練する必要がある。
たとえば芸術作品は、解説などを読む前に、まずはじっと作品そのものを見た方がいい。できる限り長い時間。5分、10分、1時間。自分も以前から美術館などに行くと、まずはざっと順路に沿って作品を眺め、最も気になる作品を30分以上、できる限り眺める練習をしている。

エドワード・ホッパーの絵って、奇妙な雰囲気が気になる。

細部の重要性。集中して注意するためにはシングルタスクが良さそうだ。その訓練として、本を一冊だけ読むようにしている。並行読書は控えている。

記憶は修正される。記憶は事実ではないので注意。

陰性所見。何が無いか?を意識的に考えてみる。
健康というのがそうで、咳が出ない、鼻詰まりが気にならない、とかなかなか意識できない。咳が出たり、鼻が詰まって初めて健康を意識する。

「部下は上司の期待を満たすために情報の溝を埋めようとしがち」これには本当に注意した方がいい。情報に事実以外の主観が混じる。少なくとも事実と主観や解釈をしっかり分ける必要性がある。
自分の場合、仕事中ついしゃべりすぎてしまうので、注意が必要だ。

「コミュニケーションの不具合」が色んな問題の原因。しかし、そのズレが何か思いがけないものを生み出す可能性も考えている。「主観のズレ」というコンセプトで、イノベーションに資することができないか。

不都合な真実から目を背けずに、不快な状態に慣れること。マッチョな姿勢。真のリーダーは、危機にも、不快な会話にも淡々と対処する。フラット。最近、中学生になった長男が何を考えているのか、さっぱりわからない。しかし、その状況にもフラットに淡々と対処しよう。

子どもに対しては、わかりやすく率直なコミュニケーションを心がける。妻に対しても率直でいい。複雑なコミュニケーションは会社で十分。家族関係を複雑化しない方がいい。

感情的になったら、アートを鑑賞するときのように、一歩下がって全体を見わたす。それって、まさしく夏目漱石草枕』の「非人情」の視点だよなあ。そうやって色々な概念がつながる。読書は機械だと感じる。

ふと「ブラタモリ」を見ていて、観察力を磨くブラタモリとも言えると感じた。ここにも接続できる。こういう接続は、ドゥルーズ的なものを感じる。接続するための読書。その意味で『観察力を磨く名画読解』はしっかり機能したようだ。

観察力を磨く 名画読解

観察力を磨く 名画読解