森川すいめい『その島のひとたちは、ひとの話をきかない』を読んだよ

精神科医の本。何と言っても、本のタイトルが素晴らしい。「その島のひとたちは、ひとの話をきかない」。それだけで読むことにした。タイトルが素晴らしい本は間違えない。
結果、内容も素晴らしかった。色んな学びと思考がある。
ちなみにタイトルですぐに思い付いたのは、各自が勝手に自分の話をして、人の話を聞かないことでみんなハッピーなイタリア人という話。

  • 問題が起こらないようにする組織
  • 問題があるのが当然として解決しようとする組織

前者は管理や監視、規則やルールも多くなる。問題解決能力が低い。どこかで見たことがあるよね。一方、後者は、変化に対応できる。ルールは最小限。現場に決定権がある。前者は、問題が怒ると悪者探しをする。責任問題となる。結果、問題を恐れ挑戦しなくなる。そして、組織は古く硬くなり、やがて新しいひとが入らなくなる。
組織論のビジネス書ではない。自殺希少地域のフィールドワークに基づく記述である。

「工夫」の力、生き延びるために、自分を変える。耐え忍ぶのとは違う。相手は変えられないから自分が工夫する。フィンランドにはそういう傾向があるらしい。これって、ライフハックだと思った。『七つの習慣』のインサイドアウトという考えにも通じると思った。色んな読書がこうやってつながる。脳内でもつながる。

もっともグッと来たのは、「自分がどうしたいか」それだけ、という言葉。他人を助けるのに、他人の気持ちをおもんばかる、あるいは忖度する必要は無い。自分が助けたければ助ける。そういうシンプルなやり方がいい。それを貫く。相手には余計なお世話かもしれないが。
川崎の踏切事故で亡くなった人も、自分が助けたいから助けたのだろう。あるいは、勝手に体が動いてしまった。考える前に助けるという姿勢。

オープンダイアローグ
フィンランド・トルニオ
ヤーコ・セイックラ「ひとが呼吸をするように、ひとは対話をする」
ただ対話すればいい。でも、結果として何かは変わるかも。仕事において、自分が意識的に放つ「ジャブ」も一種の対話なのかもしれない。
akizukid.hatenablog.com
相手にジャブを放てば、相手の脳内にそれは引っかかる。何かのタイミングで、相手がそれを実行してくれる可能性はある。変わるかもしれない。変わらなくても失望はしない。最初から期待しないジャブだからだ。ジャブでノックアウトしようとは思わない。

七つの原則

  1. 「困っているひとがいたら、今、即、助けなさい」(即時に助ける)
  2. ひととひととの関係は疎で多(ソーシャルネットワークの見方)
  3. 意思決定は現場で行う(柔軟かつ機動的に)
  4. 「この地域のひとたちは、見て見ぬふりができないひとたちなんですよ」(責任の所在の明確化)
  5. 解決するまでかかわり続ける(心理的なつながりの連続性)
  6. 「なるようになる。なるようにしかならない」(不確かさに耐える/寛容)
  7. 相手は変えられない。変えられるのは自分(対話主義)

自殺希少地域の人たちは、人間も一種の自然として扱っているんじゃないか、という気がしてきた。雨が降って、天に文句をつけてもどうにもならないように、他人を思い通りにしようとは思わない。
よし、明日からも、どんどんジャブを繰り出そう。

ちょうど一年前のモレスキンを読み返していたら、マルクス・アウレリウス・アントニヌスの『自省録』の言葉を抜き書きしていた。

自分でコントロールできるのは、自分の心であり外的な事柄ではない。それに気づけば強くなれる。

しかし、その言葉に続いて自分が書いていたのは、「外的な事柄」や他人であっても、粘り強く働きかけて動かさないといけん、という内容だった。過去の自分に感心してしまった。野中郁次郎さんが言うように、他人を説得して主観を客観にしていくことが大事という面もあると思う。まさしくGRITという言葉。あるいは、インヴィクタス。不屈の精神。マッチョ。しかし、そういう姿勢が自殺と紙一重だということもわかる。