若田部昌澄『解剖アベノミクス』はアベノミクスを理解するのにちょうどいい本

一気に読みました。
今の私の感触は、アベノミクスは正しいが、税収弾性値は財務省の1.1程度が正しいかもしれない。
よって、次のように考えています。消費税の増税は必要(元々日本は他の先進国に比べて税率が低い)だが、来年4月のタイミングはよろしくないかもしれない。どうしても予定通り増税するのであれば、他の減税とセットがいいのでは。あと社会全体としては「よいデフレ」なんて無い。
以下、読書メモ(レバレッジメモ)です。

レバレッジメモ

インセンティブ、トレードオフ、トレード、マネー

菅直人VS竹中平蔵の論争(2009年12月16日)
経済成長(長期)は供給側で決まる。
完全雇用でない状況=短期では、需要側が大事になる。

経済政策の3つの目標

  1. 経済成長:余力を上げる
  2. 景気安定化:余力を残さない
  3. 所得再分配:国民の最低限の所得の保証、格差の是正
  • オークンの法則

実質経済成長率と失業率の間に相関関係がある。経験則。

黒田東彦日銀総裁
デフレの原因と責任を分けている。原因は色々あるが、デフレに陥らないようにすることが中央銀行である日本銀行の責任である。

変動相場制

  • マンデル=フレミング効果

原則として金融政策が有効であり、財政政策は無効である。
ロバート・マンデル
マルコス・フレミング

中央銀行の独立性
目標の独立性と手段の独立性を区別する。

リフレーション政策
reflation(1932)
アーヴィング・フィッシャー
石橋湛山

貨幣数量理論

日銀法の3つの欠陥

『国家は破綻する』(2009)カーメン・ラインハート、ケネス・ロゴフ
"This Time is Different"
この二人の論文は、データが誤っていたんじゃなかったけ?

なんだかどっちも「正しい」気がしてきました。

「マクロ経済モデルを扱っているエコノミストの大方は、長期の税収弾性値は1.1くらいという感触を得ています(北浦修敏・長嶋拓人「税収動向と税収弾性値に関する分析」京都大学経済研究所)。」

  • ドーマー条件

長期国債名目利子率<名目GDPの成長率

まだまだ勉強が必要ですね。

追記8/24

まだ、途中でした。この↓に追加して後ほどアップします。

レバレッジメモ追加

政府にできることとできないことの区別
イノベーションは、予測不可能、不確実性、偶然の要素によって左右され、試行錯誤によってしか生み出されない。
Jリーグ発足時、プロ野球はもう駄目になる、という人がいましたよね。そこに突然現れたのがイチローさんでした。
アメリカですら、スティーブ・ジョブズは一人しかいない。
→『プランB』
イノベーションを国家の補助金で起こそうという発想がもうたまらんね。

「産業政策がうまくいったようにみえる場合(たとえば韓国)でも、いろいろな幸運な条件と、政策の舵取りがきわどく成功したために可能になったものだ、したがってまねしないほうがよい」(大来洋一)

政府がとるべき戦略

  1. 規制緩和を含む競争促進政策
  2. 教育の充実のために高等教育への支出を増やす
  3. 試行錯誤を許容するための政策競争の環境を作り出す

財務省高等教育への支出を「投資」とは見ていないふしが感じられます。削減対象としてしか見ていない。あるいは、そもそも財務省に「投資」の思考は無いのかもしれません。
政府に求められるのは国民の創造力を最大限に引き出すこと。阻害することではない。
→要するに邪魔するなと
→計画的なイノベーションに予算をつけるなと

TPPの要点

  1. 加盟国の関税の原則撤廃
  2. 各国共通の広範なルール作り

TPP反対派は、アメリカと交渉することそのものを嫌っているのではないか?
→あるいは、アメリカ陰謀論
→あるいは、日本の交渉力を信用していない(笑)

交渉に費やす時間が少ないのは気になる。ただし、これは安倍政権というよりは、民主党がせっかくの時間を浪費したから。

2000年代は再配分後の所得格差はむしろ縮小している。
格差感は?
小塩隆士
人は、自分の所得の動向をもって格差があるかどうかを判断する。
1980年代のバブル経済でも格差は拡大していたのに、問題視されなかった。
問題視されるようになったのは特にリーマンショック後。
全体の所得が下がる→格差感を増幅する。

3-5歳の就学前児童の教育を無償化する計画→教育政策として評価できる

ボンド・コンヴァージョン

大事なのは海外情勢を言い訳にして政府がとるべき政策をさぼらないこと。
これまでの政府や日銀は、海外情勢の悪化を自らの政策努力不足の言い訳にしてきた。
→痛烈な批判(笑)

自民党の経済政策思想4グループ

補足

いつもブログを読んでいる id:shavetail1 さんからTwitterでコメントをもらいました。
そこで参照されていた資料も読んで更に勉強したいと思います。
要点としては、確かにこれまでの税収弾性値は1.1程度が適当かもしれない。しかし、デフレ期においては税収弾性値は大きくなる、という知見でした。それであれば3.13を元に今後の政策判断をするべきかもしれません。
それなら消費税増税を急ぐ必要はない。まずはアベノミクスによってデフレから脱却することが先決。それで財政再建もいくらか可能。そして落ち着いて消費税をアップすればよい。
今の私の考えは、その辺りに落ち着きました。また、今後も変わるでしょうが。

追記

2014/07/02 少し書き加えました。

解剖 アベノミクス

解剖 アベノミクス